「開物成務」スピリット体現記(1)地球儀から見る世界
仲居 宏二(高17回、早稲田大学第一文学部哲学科卒業)
母校の校友会報に拙稿を載せていただけること、また、校友会Webサイトへの掲載、なんと名誉なことか、ありがたく思っています。
卒業して既に50年以上、お世話になった母校在校生も読まれるとのことなので、あえて現役の後輩たちに向けて書かせていただきます。
大学へ進学、卒業後は就職、なんとなくこれからはマスコミの役割が大きくなるだろうということでNHKに入局(番組制作)し、ほぼ40年間勤めました。大きな志もなく、もしかしたら広い世界を見られるかも、〝遠くを見る〟がテレビの語源、世界を見たい、知りたいと専ら〝海外取材〟の企画を立てられると思っていました。企画次第で会社のお金で海外にも行ける、大学に入るまでは多分半径10キロ圏内が僕の〝世界〟でした。簡単に言えば〝お上りさん根性〟です。その負い目を仕事でリベンジしたいと思っていたのです。
一枚の企画書で自分の給料の何十倍も予算が使える、それを番組としてテレビで多くの人に訴えられる、これは大きな魅力でした。もともと旅行は大好き、でも学割を使っての国内旅行だけではこれからの時代には不十分ではと思っていました。それを可能にできる就職先はまだそう多くはなかった時代です。
所詮は卒業したばかりの若造、当時は海外取材に行けるのは局内でも名を挙げたディレクターや報道現場(ニュース)の人に限られていました。幸運にも初めて実現したのは就職後7年経ってからです。当時はまだ珍しい海外取材、羽田空港には部長さんはじめ職場の人たちが数十人も見送りに来てくれました。
こうしたきっかけで味を占めて、現役時代はできるだけ旅行ではいけないところに行きたい、ニュースと違った一定のメッセージを番組で伝え、それを視聴者に見てもらえるといったやりがいを感じていました。その後プロデユーサーになり、管理職となり、会社の役員などを経る中で、メディア業界も大きく変わってきました。日本からの発信、異文化接触、さらにはビジネスとしてコンテンツの海外展開などに携わりました。さらにはメディアの国際貢献、途上国支援なども経験することになり、特に途上国(アフリカ諸国、中東、東南アジアなど)に自分の役割を見出し、今でもそうした仕事に関わっています。NHKを退職後、縁あって聖心女子大学で教授として次世代を指導する機会も得ました。振り返れば、“開物成務”の精神を、知らず知らずのうちに仕事を通して体現していたように思います。
後輩たちには、より一層地球規模で世界を見て、もろもろの課題に取り組んで欲しいと願っています。また機会がありましたらさらに具体的な取り組みなどもお話させていただきたいと思います。
とにかく地球儀を前にして、世界を舞台に”開物成務”の主役になってください。