活躍する校友紹介

飯盛 勢成さん(高58回)


瀧川鯉丸として 落語「二ツ目」昇進

2006年に逗子開成を卒業した、飯盛勢成さん(高58回)は、早稲田大学卒業後、落語家としての道を歩み始めた。2015年、落語社会で一人前と認められる「二ツ目」に昇進し、「瀧川鯉丸」という芸名を付与された。
 
6月3日(水)には横浜にぎわい座で「二ツ目」昇進披露公演を行い、校友も多数応援に駆け付けた。 次は「真打ち」。10年はかかるといわれるが、これからの鯉丸さんに期待したい。 落語との出会いを語って頂いたので紹介します。

小学生の頃からラジオっ子でした。人様の「話を聞く」のが好きだったんです。初めて落語を聞いたのは、高校3年生の大晦日。受験勉強の合間、大掃除をしながら聞いていたラジオから。今までの、おじいさんが演る古くさいお笑いという印象とは全く違うもので、落語が終わるまで雑巾を持つその手が全く動かせませんでした。逗子開成に落語研究部があったら、もっと早く出会っていたかもしれません。
 
在学中は吹奏楽部でファゴットを吹いていました。2学年上の沖津さんという先輩と二人のパートでした。めちゃくちゃ上手い先輩で、ぜんぜん手が届かなかったです。中学から数えて4年目の高1のとき、先輩が高3でしたから、この1年はパートとしても技術的にやっと安定してきたかなという時期。ちょうど創立100周年の頃でした。ロングトーンという基礎練習、ただ一音ずつ音階を吹くだけなんですけど、すごくいい音色で吹いてる自分が気持ちよくなってしまって、このままずっと基礎練をしていたいなあと思ったことがありました。高2の時、受験勉強の関係で途中で辞めてしまったので、後から入ってきた後輩とそういった経験ができなかったのが心残りです。
 
師匠・瀧川鯉昇の落語と出会ったのは大学1年生の冬です。それまでの1年間、先輩に連れられて色々な落語家の芸を見ていましたが、どの落語家よりも言葉が新鮮で、心地よくて、ずっと聞いていたいなあと思いました。落語って、同じ演者の同じ演目を二度聞くと「またこの演目か」と思うことが多いんですが、うちの師匠の落語は同じ演目を何度も聞きたくなる。けっこう現代的なくすぐり(ギャグ)も入れるんですが、それが落語を壊さない絶妙なバランス。 師匠は「ああしなさい」「こうしなさい」という形の指導をしない人です。もちろん明らかに間違っていることは正してくれますが、「お前はこうしたほうがいい」という言い方はしません。「じぶんの感性で気づくしかない」という信条だそうです。「俺に似るな」とも言います。
 
この春、四年間の前座修業を終え二ツ目に昇進し、先日は桜木町の横浜にぎわい座で二ツ目昇進披露目の落語会を催しました。校友の先輩方にも多数お運びいただきまして、心からお礼申し上げます。まだまだ「じぶんの落語」を模索する毎日。頼りねえなあと思われると思いますが、いま目の前のお客様に喜んでいただけるよう精一杯やらせていただきますので、人寄せの機会などありましたら気軽にお声掛けください。
 
先日、落語家として生きていますという報告も兼ねて逗子開成の先生方へ挨拶に伺ったのですが、いずれの先生も、「たぶん、あの先生はこういう反応をするだろうなあ」と思った通りのリアクションをしてくれました。逗子開成の先生方はどの先生も個が強くて、人の期待に応えてくれるという意味で、先生方も「芸人」だなあと思いました。
 
(投稿・2015年7月発行/会報53号に掲載)